産業保健Q&A


1 安全衛生管理体制について

Q1-9. 衛生委員会で何を審議する?

衛生委員会でどんなことを審議すればよいですか。

A1-9.
審議事項は、労働安全衛生規則第22条に11項目が示されています。まずは、顔合わせの意味で職場巡視を委員全員で行い、その後で問題点について協議し、改善点等の話し合いを行い、その後の委員会で規則の一項目ずつ実施してはいかがでしょうか。
一  衛生に関する規程の作成に関すること。
二  法第二十八条の二第一項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
三  安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
四  衛生教育の実施計画の作成に関すること。
五  法第五十七条の三第一項及び第五十七条の四第一項の規定により行われる有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
六  法第六十五条第一項又は第五項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
七  定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断、法第六十六条の二の自ら受けた健康診断及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
八  労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
九  長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
十  労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
十一  厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

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Q1-8. 産業医の選任義務の労働者数のカウントは?

産業医の選任義務について、派遣労働者や請負企業の従業員は、労働者数に含めますか。

A1-8.

産業医は、常時使用する労働者数が50人以上の事業場で選任しなければなりません。 常時使用する労働者には、派遣労働者は含まれますが、請負の労働者は含まれません。


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Q1-7. 「職長教育」の「職長」は誰のこと?

労働安全衛生法第60条によると、「事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長 その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、 安全又は衛生のための教育を行わなければならない」とされています。 ここでいう職長とは、どの職制を示しているのですか?

A1-7.

「労働者を直接指導又は監督する者」なので、常に現場にいて、直接労働者の作業の進め方を指導、 監督する立場にある者をいう趣旨であり、ラインの末端の監督者が該当します。職長、伍長、組長等の名称のいかんを問いません。


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Q1-6. 産業医の選任はどうすればよいか?

県内に事業場が数カ所あり、それぞれで50人以上の労働者を雇用しています。 監督署から産業医の選任をするように案内されましたが、どのように選任したらよいのですか?

A1-6.

事業場ごとに、労働者が50名以上になると、産業医の選任が必要になります。 各事業場で、管轄の監督署にそれぞれ届出をします。産業医は、郡市医師会で紹介してもらえます。 なお、複数の事業場で同じ産業医を選任しても、問題はありません。


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Q1-5. 職場巡視はどのように実施すればよいか?

職場巡視の実施の仕方を教えてください。

A1-5.

当支援センターが編集し、茨城県医師会が発行した「産業医巡視記録」に、職場巡視のチェックポイントをまとめてありますので、 巡視の際にお使いください。


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Q1-4. 労働者が50名以上になったらしなければならないことは

労働者が50名以上になりました。産業保健に関して、産業医の選任の他にしなければならないことがありますか?

A1-4.

労働者を常時50名以上使用する場合は、産業医の選任義務があります。 他にも、衛生管理者の選任と、健康診断の結果報告書の提出義務が出てきます。また、衛生委員会の開催も必要です。


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Q1-3. 安全衛生委員会を設置の根拠は?

社内で安全衛生委員会を設置したい。委員は何名必要か?またその根拠は?

A1-3.

安全委員会・衛生委員会の設置は、労働安全衛生法の第17条、18条、19条に規定されています。 衛生委員会は、常時使用する労働者が50人以上の事業場は、業種に関わらず設置しなければなりません。 安全委員会の設置は、業種及び規模が限定されています。 委員の人数には決まりはありませんが、委員は労使半数で構成する必要があります。話しあう内容も含めて、 厚生労働省のホームページで詳しく説明されていますので、ご覧になってみてください。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0902-2a.pdf


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Q1-2. 会社の上司に安全配慮義務を理解させるには

会社には、雇い入れている従業員が安全に業務に従事できるようにするべき義務、安全配慮義務があると聞いています。

特に今後は、従業員のメンタルヘルス面についての配慮も重要になってくると考えられますが、当社では長時間労働に従事する従業員が多数おり心配です。

しかし、会社上司は業務を優先し、労働時間を短縮するなどの対策を講じようとしません。上司の考え方を変えるにはどうしたらよいでしょうか。


A1-2.

安全配慮義務とは、「労務の提供にあたって、労働者の生命・健康等を危険から保護するよう配慮すべき使用者の義務」のことです。

判例によれば、「(雇用関係のように)ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの」(陸上自衛隊八戸駐屯地事件)とされています。

そもそも労働者は労働を提供することにより、賃金を得て生活しています。この労働者が提供する労働の場所を用意するのは使用者です。ですから、使用者は、労働者が安全にまた快適に仕事が出来る事務所・作業場・施設・器具を用意したり、仕事の管理等について、労働者の生命や健康を危険から守るようにきちんと配慮する義務があります。

過労死を防ぐという側面からは、従業員に対し適切な健康管理をすることが会社の義務であり、健康配慮義務と呼ぶこともできます。

安全配慮義務を怠ることによって経営者が負う責任の一つは、民事上の損害賠償責任です。

経営者がこの義務を怠ったことが理由で労働者に損害が発生した時は、民法415条の債務不履行となり労働者の損害を賠償しなければなりません。

治療費や休業損害が労災で補填されれば、経営者がそれ以上の責任を負うことはないという考えは間違いです。「過労死」やメンタルヘルス疾患は必ずしも労災として認定されるわけではありません。また、労災認定には時間もかかります。さらに労災補償は損害の100%を補填するものではありませんから、労災認定請求と並行して損害賠償請求がなされるのが一般的です。

有名な「電通事件」(最高裁第2小 h12.3.24)では、長時間残業・深夜勤務・休日出勤などの過重労働が続き、うつ病になって自宅で自殺した当時24歳の労働者について、会社側には長時間労働と健康状態の悪化を認識しながら負担軽減措置(安全配慮義務)を取らなかった過失があるとして、(1)会社は遺族(両親)に謝罪するとともに、社内に再発防止策を徹底する、(2)会社は一審判決が命じた賠償額(1億2600万円)に遅延損害金を加算した合計1億6800万円を遺族に支払うことで和解が成立しています。

この裁判においては、「(上司)は、同年7月ころには、(労働者)の健康状態が悪化していることに気付いていたのである。それにもかかわらず、・・・(上司は労働者に対し)、業務は所定の期限までに遂行すべきことを前提として、帰宅してきちんと睡眠を取り、それで業務が終わらないのであれば翌朝早く出勤して行うようになどと指導したのみで、Aの業務の量等を適切に調整するための措置と採ることはなく、かえって、同年7月以降は、(労働者)の業務負担は従前よりも増加することとなった。」と、上司が残業の自主申告が明らかに少ないことに目をつぶり、会社全体としてサービス残業状態を作り上げていったことを厳しく指摘しています。

このように使用者は、長時間労働については労働基準法の罰則が適用されるばかりでなく、労働者本人又はその遺族等から高額の損害賠償金を請求されます。まさに企業のリスク管理上、真剣に取り組まなければ企業存続に関わる問題であると言えます。

また忘れてはならないことは、従業員の健康管理に配慮することは、従業員にとっては職務をより行いやすい環境を整備することに他ならず、結果として職務遂行の充実・効率化を導くものだということです。

従業員が常に良好なパフォーマンスを発揮するには、精神的にも負担をなくす職場環境を構築することが極めて有用です。それでないと、勤労意欲の減退につながり、有能な従業員が病気で休職したりあるいは外部に流出するという事態にもなりかねません。

それは、そのまま企業としての活力低下に直結します。経営幹部は、この問題をもっと深刻に受け止め、認識を改める必要があると思います。

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Q1-1. 衛生管理活動はどのように展開するか

清掃業を営んでおります。
会社に衛生管理者はいますが、衛生管理活動をどのように展開してよいかわからないので、教えてください。


A1-1.

清掃業で、常時50人以上の労働者を使用する場合は、衛生管理者のほか安全管理者の選任義務(従って、衛生委員会のほか安全委員会又は安全衛生委員会を設置する義務)もありますが、ここでは衛生管理活動を中心に説明します。

衛生管理活動の基本は、職場から不快的な要因、有害な要因を除去し、労働者の健康の保持・増進を図ることが課題となりますので、経営トップの指揮の下、衛生管理者、産業医等を中核とした労働衛生管理体制を確立するとともに、作業環境管理、作業管理、健康管理(これらを「労働衛生3管理」といいます)を総合的に実施することにあります。

また、これら活動を円滑に実施するためには、経営トップから労働者に至るまで労働衛生教育を徹底することが必要不可欠です。

労働衛生管理体制を確立するためには、衛生管理者及び産業医等の責任を明確にするとともに、必要な権限を与え、これらが協力して労働衛生対策を進めるための組織を作る必要があります。

作業環境管理とは、作業環境中の種々の有害要因を取り除いて適正な作業環境を確保するもので、作業環境測定と評価、評価結果に基づく設備の改善などが中心になります。

作業管理とは、職業性疾病の予防という観点から作業自体を管理して、作業のやり方を適切に保ち、作業環境の悪化と作業者への影響を少なくするものです。具体的には、作業の手順や方法を変更したり、保護具を適正に使用することなどが含まれます。

健康管理とは、健康の異常を早期に発見し、その進行や増悪を防止するとともに、健康診断などを通じて労働者の健康状態を把握し、作業環境との関連を検討することにより、労働者の健康障害を未然に防止することです。健康診断の実施とその結果に基づく事後措置、さらには保健指導まで幅広い内容を有します。

これら労働衛生対策を実施するうえで、職場内の危険性や有害性を特定し、その程度を見積り、その結果に基づくリスク低減措置の内容を検討する、いわゆる「リスクアセスメント」という手法が注目され、安全衛生法の改正により、平成18年4月から事業者の努力義務となりました。

リスクアセスメントの基本的な考え方や実施については「 危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が、さらに化学物質による危険性又は有害性の調査に関しては「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が出されていますから、参考にしてください。

危険性又は有害性等の調査等に関する指針
化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針






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